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独り言シーズン5


by hisaom5
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42.195kmの科学

42.195kmの科学 マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」 (角川oneテーマ21)

NHKスペシャル取材班 / 角川書店(角川グループパブリッシング)



マラソンをはじめて、膝の負担を考えて走り方を工夫していた。膝への衝撃を考えるとそれまでやっていた「かかと着地」ではなく、「つま先着地」の方が良さそうだった。しかし、つま先着地はふくらはぎをすぐに疲れさせる。

・・・なんてことを考えながらウェブを調べていたら辿りついた本。NHKスペシャルで放映された内容の書籍版ということらしい。マラソンの世界記録上位を占めるケニア・エチオピアの選手たちの走りの秘密を「科学」した本だ。

(これはアマゾンの書評にもあったが)これを読んだところで自分のマラソンのタイムが向上するとは思えなかった。そもそも東アフリカの選手たちは子供の頃からの環境が違うし、一流のマラソンランナーを目指してトレーニングし続けて出来上がった体だから可能な走りを、私が真似できるはずはない。

それはよい。

私が問題だと感じたのは、「科学」の部分。何人かの研究者が登場して、東アフリカの一流選手たちの走りを分析する。すると、研究者が驚くような数値を、それらの選手たちはだす。それはどちらかと言うと研究者が提唱しているセオリーを覆すような数値であったりする。

するとその研究者(筆者?)は、「なぜセオリーを覆すような数値を出しているのに、すごい記録が出せるのか」を考え、別の理由を引っ張り出してくる。これは研究者の態度としておかしい。

正直な研究者であれば、まず自分たちのセオリー(仮説)を疑わなければならない。「自分たちのセオリーでは走りの早さを説明できないのかもしれない」と思わなければならない。なのに、自分たちのセオリーは揺るがない数学の法則のような扱いを受けていて、無理やり別の理由をひねり出そうとするのだ。

こんな「似非科学」が何度か出てきて辟易してしまった。実際、科学を取り扱うNHKスペシャルでは、このようなセオリー(仮説)を全面に押し出した、「疑わない態度」で番組が進行することがほとんどである。

番組で取り上げる新たなセオリー・仮説は、多くの場合大変にエキサイティングなものが多い。だからパッと見楽しい。しかし、たくさんある仮説の一つにすぎないものが、あたかも世界中の研究者全員が支持しているかのような「疑いの余地がない」ような扱いで紹介される番組進行は、いつも見ていて気分が悪くなるのだ。

この本もそれと全く同じ態度の「科学」の書籍だった。
by hisaom5 | 2014-03-04 19:02 | 読書